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「でも誰があんたをハメたりするんだよ?」
「そりゃ敵は多いからな。俺がいなくなったら喜ぶ奴はいっぱいいるさ」
疲れたような口調で永井は言う。自分で撒いた種とはいえ、味方もおらず逃げる場所も無く絶望していたんだろう。
「誰かがこそこそ俺の行く末見て笑ってんだと思うとそんな奴の思惑通りに行くかってムカついた」
「いなくなって得する人間か…」
永井の話を完全に信じた訳ではないが、ここまで主張するには何か理由があるはずだと直感していた。
「そういえばあんたは知ってるのか?」
「何を?」
絶対にありえない事だと思っているが、どうしても気になる事が一つあった…
「さっき言ったけど、上林先生とあんたは双子なんだろ?」
「そんな奴知らねえよ。そうかもしれないけど、俺に家族はいないって言ったろ?」
「でも…」
その先を言おうとしたが、止めた。
俺のおかしな考えは妙に現実味を帯びてきた。
「だったらもしかして………ちょっと出ていくけど逃げるなよ!」
俺は部屋を飛び出して、一階に降りた。
ありえない、ありえない!
そう思いながらも胸の奥では何かが暴れるように疼いた。
「京子!」
流しで皿を洗う京子は俺を睨む。
「あのさぁ、訊きたい事があるんだけど」
「知らない!雪乃さんは気分悪いって休憩しちゃうし、サーシャはあからさまに不機嫌だし。またあんたが何か面倒な事に巻き込んだんでしょ?」
紛れもなくその通りだ。京子は当りが強いが言葉は常に正論なところが敵わない。
「ごめんな。ところであのさ、上林先生が辞めた時って5年生くらいだったろ?辞めた理由って知らないか?」
「はあ?知らないし。なんか何人かの保護者と揉めたとか聞いたけどそんな感じじゃない?興味ない」
「そうか、ありがとう」
俺はまた二階にかけ上がった。古藤まき子に電話をかけながら。
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