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6.
まき子はまた即座に電話に出た。
『なに?』
「上林先生が教師を辞めた理由ってわかる?」
『何でそんなにあんたの先生にばっかり興味あるの?永井の方がだいぶ色々わかったのに』
まき子は自慢のスピードで情報収集に取り組んでくれているようだ。
「永井はもうここにいるしそれに…」
『それに何?』
「強盗殺人に関しては冤罪かもしれない」
電話越しにでもまき子のショックが伝わった。
確かにこれは誰も知らないはずの事実だから。
『や、でも色んな証拠も上がって黒間違いなしだって。防犯カメラにもはっきり映ってるし、その映像も手に入れたのよ』
「でも永井がその事を否定して暴れた。何だか本当に違うんだろうなって気がしたよ」
『そうなの……でもどうやって止めたの?』
「サーシャが止めてくれた。あいつって何者なんだろうって感じだよ」
『サーシャ?誰、オカマ?』
あれ?言ってなかったっけ?
どうでもいい話は死ぬほどしてるからわからない。
「ほら、例のロシア人の女の子だよ。前言ったろう?」
『思い出した、まだ居たんだ。でさぁ、何であんたの先生の事を知りたい訳?』
「気になる事があるんだ。何か嫌な予感がしてな……先生は何で教師辞めたんだ?そんくらいはわかるだろ」
『あんたもしかして…』
あんまり言いたくないがその半面、誰かに話したかった。
「俺は上林先生が犯人だと思ってる」
『やっぱり』
まき子はどこか納得した様子だった。
『上林先生が辞めた理由はね、その当時色々な事件起こして捕まった犯人に似てたせいなの。誤解なんだけど、保護者からはあんなんに子供は預けられないとかでちょっと騒ぎになったみたい』
「思った通りだ。その時に捕まってたヤツが永井だな。それで余りにも似てるって噂が広がったんだ」
『馬鹿はどこにでもいるのね』
「そんな事で社会的地位を失った先生が……出所した永井を人生かけて潰しにかかったんだ」
『信じられない……』
「俺もだよ。あり得ないと思ってる。だからさ、先生に会いたいんだ」
俺はあまり興奮はしていなかった。むしろ冷静に、この事件の真偽を確かめたかった。
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