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「会いたくねえって言ってんだろ!」
「……だったら付き出してやる!いつでも警察を呼ぶことができんだ。冤罪で首括りたくなかったら真実に会いに行くんだよ!」
脅す形になってしまったが、それほど必死だった。永井が直接先生に会えば、事の真相は全てわかるはずだと俺は確信していた。
「何だよ脅すのか?」
「悪かった。でもどうしてもあんたが居ないとダメだ」
「何で?」
「先生は絶対に何か知ってる。それにあんたはやっぱりそっくりだ……間違えた程に。あんたが会えば先生も何かを感じるはずだ」
気の利いた言葉が出るわけでもなく、ただ主張をごり押ししただけの説得とも呼べない説得しか出来なかった。
永井は何やら考え混んでいるようだった。テーブルで指をリズム良く打ち、手元を見ている。
正直心を打ったとは思えなかったが、必死であることが伝わればいいと感じていた。
すると永井はしばらくして、口を開いた。
「……わかった。行く」
俺は思わず心の中でガッツポーズをした。
あとはまき子が先生の居所を特定するだけだ。
「ただし条件がある」
その一言で急に冷静になった。
そりゃこっちの要望を受けたんだから、条件はあってもいいが。
「終わったら逃がしてくれ。会ったところで何もわからなくてもだ」
「…わかった。ただ今後は誰も傷つけないと誓え」
「ああ。あと…」
まだあるのか。
「少し酒を飲ませてくれ。少しでいい」
本当にしょうがねえ奴だなと思いながらも俺は確か一階のグラス棚にお客さんからもらったウイスキーがあったな、なんてことを考えていた。
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