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「この…馬鹿王が!!!!地獄の業火よ、炎獄の壁よ、我が前に立ち塞がりし全ての物を焼き払え、ヴォルテックス・インフェルノ!!!」
俺は詠唱するグルンヴェルデを眺めながら、ただ思うのは一つ。
”やっちまったなぁ”
詠唱を聞いたリサとシルフィーに緊張が走る。
走り寄ってグルンヴェルデ伯爵を切り伏せたい。
そんな気持ちを俺の指示に従い抑えるだけで手一杯だ。
詠唱を終え、呪文名を発し、魔法が発動する!
そうリサとシルフィーが思った瞬間。
リリスは俺の前に防壁を展開。
余計な事を…と思いつつも、グルンヴェルデ伯爵を見る。
で、起こったことは?
本来ならば、黒炎の壁が発生して俺に向かって迫ってくるのだが、それも発生しない。
ただ、グルンヴェルデ伯爵の体がビクビク震え、白目を剥いて倒れただけだった。
その様子をリリス、リサ、シルフィーが呆然と見ている。
極力、干渉しないことをモットーとしている侍従長ですら、驚いている。
「王、一体何が…」
震える声でリリスが俺に聞いてくる。
リサもシルフィーもその答えが気になって仕方ない。
「なに、魔法を使おうとすると、その練った魔力を首に巻いた紙から雷として自分に跳ね返るようにしただけさ。死なない程度にね。」
リリスもリサもシルフィーも呆然としているが、シルフィーが質問する。
「王様、怖れながら、質問を宜しいでしょうか?」
「構わない。言ってみるが良い」
「紙であれば破れるのでは?」
その問いに、リリスもリサも反応する。
「副隊長、構わないから、腰の剣でグルンヴェルデ伯爵の首に巻かれている紙を切ってみなさい」
俺の指示に、シルフィーは何がしたいんだ?と思いつつ、従う。
紙を手に持つと、シルフィーは違和感に気付いた。
紙と聞いているのに、固い。
慌てて俺を振り返るシルフィーに、俺はチョキを出して、切る素振りを見せる。
呆然としながら、シルフィーは剣を紙に当てると、一気に引く。
しかし、フィーーーンと澄んだ音がするのみで、一向に切れない。
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