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そろそろ待ちくたびれる頃じゃないかしら?」
「そうね、ありがとう、姉様。いってくるわ。」
海よりも深いため息をつくと、シランは仕方なくリビングを訪れた。
「お父様、お呼びになった?」
リビングに入るとまず目に入ったのは父の疲れた顔。
顔色は悪く、目の下にクマもできている。
「お父様、もしかして昨夜お休みになっていないの?」
父は「ああ」とも「うう」ともつかない返事をすると、シランを向かいのソファに座らせ、ゆっくりと話しはじめた。
「…シラン。長くなるが…聞いてくれるか?我が一族に伝わる、お伽話を。」
父は冗談や作り話が嫌いな人だったから、少しシランは驚きつつも、コクリとうなづいてみせた。
父の手がかたく、強く握り締められるのをみながら。
シランはこれから自分に何がおこるのか、まだわかっていなかった。
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