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むかしむかし、
まだこの国が戦争をしていた頃のお話です。
あるところに、美しい声を持つ女性がいました。
その声はただ美しいだけではなく、聞いた者を癒し、穢れを清める力を持った、不思議な声でした。
しかし、女性はその力が利用される事を恐れ、家族以外の前では歌った事がありませんでした。
ある日の事、
父と母が女性の自室を訪れました。…なんだかいつもよりうかない顔で。
父は嫌そうな顔で、重たい口を開きました。
「お前に…、戦争へ来るよう、王宮から手紙がきた。お前の治癒力が必要らしい。」
女性はそれを聞いた途端眉間にしわをよせ、短く「なぜですか?」とたずねました。
父の話では、女性より5つ下の末の妹が、誤って貴族のつながりの友達に、女性の事を話してしまったらしいと言うのです。
…王の命は絶対です。
だから逆らう事はできません。
たとえ、家族が行かせたくなくても。
いいえ、本人が行きたくなくても。
次の新月の夜。
女性は王宮の関係者と共に戦場へと向かいました。
戦場は血と、土と、火薬の匂いが混ざったひどい匂いが鼻をつきました。
それから毎日、女性は歌い続けました。
傷ついた兵士たちを癒すた
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