お伽話

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めに。 孤独だとばかり思っていた女性でしたが、女性に癒された兵士たちはとても感謝して礼を言いました。 そうしているうちに、女性は一人の兵士と恋に落ちました。 「戦争が終わったら、国に帰って結婚しよう。」 そう、誓っていました。 しかし、幸せは長くは続きませんでした。 次の戦いで、兵士たちは苦しい戦いを強いられました。 敵の軍が他国を味方につけ、兵力を増していたのです。 仲間はどんどんやられていきます。 と、その時、兵士の一人が叫びました。 「おいっ…?将軍かいないぞ…?」 それもそのはず。 軍のトップの人たちは自分の身を守るためにさっさと逃げてしまったのですから。 絶望的な空気が戦場に流れました。 「うっ…」 くぐもった声と共に、女性が愛している兵士が乾いた土の上に倒れました。 女性は目を見開いて駆け寄ると、兵士はもう、力尽きていました。 周りを見ると、もう誰も生き残っていません。 敵の軍が攻めてきて、女性をとらえました。もがきますが、どうしようもありません。 もがいている女性の目に、恋人の兵士がうつりました。 敵の兵士に踏まれそうになりながら倒れている恋人を見ると…… 女性の中の「何か」が、 音をたててプツリと切れました。 「嫌だ…。 誰があの人を殺したお前らなんかの助けになどなるものか…!」 女性はそう言って、息を吸うと、歌いはじめました。 でもその喉から出てきたのは、あの美しい声ではなく、恨みに満ちた、恐ろしい声。 次々と敵の兵士たちは苦しみはじめました。 今まで女性が歌っていたのは「癒しの歌」。 今、歌っているのは「滅びの歌」。 女性の恨みは敵の兵士たちだけではおさまらず、味方の軍のトップたちまでも恨み殺してしまいました。 …… これは、むかしむかしのお話です。 その後、女性がどうなったのか、知る人はいません……。
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