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そんなことを、問題を解きながら頭の隅っこで考えていた。
あっという間に1時間が過ぎた。
「お疲れ。また来週ね」
先生が資料などを整え鞄に入れた後、そう言って席を立ち、カタンと丸椅子をいつも置いてある場所に戻した。
私もいつものように席を立って、先生を玄関まで送ろうと後ろをついていく。
しかし、ドアを開けてそのまま出て行くのかと思いきや、ノブに手をかけたまま固まった。
「?」
どうやら、ドアの横に立て掛けていた私の描きかけの空の油絵を見ているようだ。
「どうかしました?」
「葉月さん」
変に思った背中に問いかけると、私の名前を呼ばれたのでドキリとする。
恐る恐る伺っていると、ゆっくりこちらに振り返った。
そして、真剣な眼差しで私を見下ろしながらこう言った。
「今度、俺のこと描いてくれない?」
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