1人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
パラ。
パラパラパラ。
「はぁー……」
暖かい夏の風にページをめくられていく教科書を見るともなく見ながら、頬杖をつき溜息を吐いた。
一限目、国語。
板書するのも忘れて、物思いに耽る。
『今度、俺のこと描いてくれない?』
溜息の元である昨日の松岡先生の言葉と、その時のめずらしく真面目だった顔がぐるぐるぐるぐるして、頭から離れてくれない。
あの後、「鉛筆デッサンでいいよ」っていうのと、「日曜家に行くから」っていうのを伝えられたことを、辛うじて覚えている。
それほど、最初の言葉にパンチがあり、私にとっては絶望しかなかったから。
だって、松岡先生のほうが絶対絵上手いくせに、私が先生の似顔絵描いて見せるなんて、公開処刑にも程がある。
先生が私を描かせてって言うんならまだしも。
最初のコメントを投稿しよう!