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今年の武芸大会で優勝最有力候補の司仙子龍を完膚なきまでに叩きのめした事で彼は多くの者に知られており、 特にこの者は烈火の如き怒りを露にした。 「レオンハルト、き、貴様これは一体どういう事だ!!!? これだけの事をして、冗談でしたでは済まされんぞ!!!!」 レオンハルトの雇い主で、かつては強大な力を有した戦士であった面影を筋肉という形で残す茂久成親。 護衛の兵士に取り押さえられなければレオンハルトの下まで行き殴り掛かっていた彼は、 レオンハルトの事を金さえ出せば必ず仕事をやり遂げる有能な者と信頼していただけに、 それを裏切られた怒りは凄まじく次から次へと罵倒の言葉が口から飛び出る。 しかしレオンハルトはそんな茂久成親を彼のものとは比較にならない程の怒りが垣間見える冷ややかな目で睨み、 「へぇ、どういう事? ──────それはこっちの台詞だ。」 途端に高まったレオンハルトの威圧に茂久成親はたじろぎ、 「な、何だと?」 「オレは最初に言ったはずだ。 くれぐれもオレを敵に回すような事はしてくれるなよ、ってな。 で、これは一体どういう事だ? 何で愛があんな所に乗せられてるんだ? 納得のいく説明をしてもらおうか。」 「そ、そんな事は決まっておろう。 あれは旧成宮家の生き残り、此度のクーデタを謀った者達の象徴としてこのように処刑するのに不思議な事は────」 「違う、オレが言っているのはそんな事じゃあない。 何で愛がそんな事されなきゃいけねぇんだって聞いてんだよ。 今回のクーデタの首謀者は自分が旧成宮家だって事も知らない愛じゃなくて、 柳生晴明とか言うロリコン野郎だぞ? 公衆の面前でいたいけな少女の首がスポーンなんて絵的にもどうかと思うし、 その点に関しても濃ゆいオッサンの柳生晴明の方が適任だから殺るんならそっちにしとけ。」 「何を戯言を、旧成宮家の象徴として殺す事に意味が──────」 「茂久、このような種の輩には何を言っても無駄だ。 小僧、貴様はあの娘を旧成宮家の残し子としてではなく"成宮愛"として助けたい。 そういう事か?」 「おお、物分かりの良い爺さんだな。 その通り、さっさと内の可愛い教え子を返してもらおうか。」 「無理だ、諦めろ。」 そうキッパリと切り捨てた司仙影虎は、 悔やむように顔を俯かせている茂久成親に有無を言わせない簡潔な口調で淡々と告げる。
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