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歴史はそうやって繰り返されて来た。 故に、正義とは勝者に他ならない。」 レオンハルトは無言で《断魔》を構えその切っ先を向けるが、司仙子龍はその殺意に煌めく光を受けながらもそのまま続ける。 「この世に生を受けてからつい先日まで公家や司仙家という必要な物が全て揃っているように見える狭き箱庭で過ごして来たオレには、 己のが力で道を切り開くという事はできない。」 「……………………で、つまりお前は何を言いたい?」 だが!!! と力強く言葉を発した司仙子龍は溢れんばかりの闘気を滲ませ、力の象徴たる式【武身】を右腕に喚び出した。 「目の前に示された幾多の道の中で、自分が正しいと信じる道を選ぶ事ならばできる!!!!」 そして膨れ上がった闘志にレオンハルトが緊張で《断魔》を握る手に力を込めた次の瞬間、 司仙子龍は体の向きを反転させ【武身】を水平に構えたままレオンハルトに背を向けた。 そう。 「オレが正しいと信じ、選んだ道はこちらだ。」 一瞬前まで属していた居場所───大和国に対峙するように。 流石にこうなるとは予測していなかったレオンハルトは目を見開き、 「子龍……………お前、それがどういう事だか分かってやってんのか?」 「無論分かっているさ。 レオンハルト、お前の示した道を行くため今まで生きて来た場所を裏切っただけだ。」 「……………………何考えてんだお前は?」 何か深い思惑でもあるのではないか。 当然の如くそうレオンハルトに疑われ《断魔》を突き付けられた司仙子龍の返答は、 「特に何も。」 「ナメてんのかテメェは。」 「お前は言ったはずだ。 物事に取り組む時に一々その意味など考えない、と。 オレも年端もいかぬ少女の処刑を黙って見守るよりも、 その少女を救うためお前と共にこの国を相手取る方が面白いと思ったまでの事。 それに、オレは敗者の側に付き悪とされるのは御免だからな。」 「なら、どうしてこっちに来たよ? どう見てもこっちは最初から負けが決定の負け戦だろうが。」 「どうせお前の事だ、何か勝算があるのだろう?」
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