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にも関わらず司仙子龍はカラカラと馬鹿にしたように笑い、 それはか細い糸一本で辛うじて繋がっていた司仙影虎の堪忍袋の尾を容赦なく断つ。 「子龍ッ!!!! 司仙家の跡継ぎたる貴様が大和国に仇成すとは何を考えている!!!? これは数百年に渡って大和国の武を司って来た我が司仙家の御先祖様方への裏切りぞ!!!」 睨み殺さんばかりに開かれた司仙影虎の両目はもうじき血の涙が流れるのではないかと思う程に充血し、 犬歯の剥き出しとなった形相がその怒りの内実を如実に物語っている。 流石にこれを笑って受け流す訳にはいかず司仙子龍は真面目な顔を作り、 「先程の問いに対する答えですが、私は到って正気です。 寧ろあの者に敵対しようとするお祖父様方の考えが理解し兼ねます。」 「─────ッ、貴様何を以ってそのような戯れ言を!!!?」 「あれは1人のために平気で100万人を犠牲にできる男。 例え大和国の威信が懸かっていたとしても、あれは──レオンハルト・スターダストは絶対に敵に回してはいけない部類の人間です。 もしもあの少女が命を落とすような事となれば、彼は間違いなく先程の言を実行し大和国は滅びる事となりましょう。」 「 あのような妄想を信じろと言うか!!!? 馬鹿馬鹿しい、たかが一人の人間の手で千年以上の歴史を持つこの大和国を滅ぼす事など──────」 「できるはずがない、ですか?」 司仙影虎の台詞を奪った司仙子龍はまるで無知な者よと嘲るかのうよな薄い微笑みを浮かべ、 「できるはずがない、無理だ、不可能だ。 ……………………お祖父様、あの者に対してそのような言葉を使っている時点で貴殿方は何も分かっていない。 筋力・反応速度・知覚領域等、凡そ多くの者がこれらを纏めて戦闘力と呼ぶであろうものが優っていたはずの私は、 武芸大会で本気にさせてしてしまった彼の手によって完膚なきまでに叩き潰され敗れました。 だが、それも当然。 そのような表面的で些細なものを強さだと思い込んでいた私は"根本的な部分で"負けていたからです。」 司仙子龍に悟られないよう茂久成親は後ろへ回した手で攻撃の命令を伝え、 初撃を担う機動性重視の式が大型の式や陰陽師の影に隠れて移動し司仙子龍へ接近。 その間も司仙影虎と面向かいお互いの主張をぶつけ合っていた司仙子龍は、 言葉で語れる所の終着点として一応の最終通告を出した。
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