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「お祖父様、茂久殿この場はお納め下さい。 今ならばまだ、旧成宮家の生き残りであるあの少女を逃すだけで済みます。 彼は"旧成宮家そのもの"を要求している訳ではないのですから、 捕らえた旧成宮家の残党達を処刑なり何なりすれば国の威厳は示せるはずです。」 「………………子龍よ、最期に一つ教えてやろう。」 茂久成親からの目配せで式の配置が完了した事を悟った司仙影虎は司仙子龍との論争で昂っていた気分を落ち着かせ、 「戦とは相手方の兵士をいくら殺した処で終わりはしない。 相手の将の首を取り初めて戦は終わるのだ。 司仙家の恥さらしめ、そこまでしてあの不届き者について行きたいというならば仲良くその首を並べるが良い。」 殺せと、司仙影虎の合図の下に配置に着いていた初撃を担う機動性重視の式が一斉に司仙子龍へ飛び掛かる。 牛と人間を混ぜ合わせたようなものや烏と人間を1対1の割合で融合させたようなものに加え、 大小いくつかの刃を組み合わせて造られた無機物的なもの等々。 10を超える明らかな殺意を宿した式が眼前を埋め尽くす光景に司仙子龍は悲しげな吐息を漏らし、 しかし非常に好戦的でこうなる事を望んでいたという笑みを浮 かべてこれを迎える。 「残念です。」 そして、薙ぎ払い一つ。 巨大化した【武身】を軽々と小枝のように振るい、機動性重視とは言えど決して軽くはない10を超える式を吹き飛ばす。 司仙子龍の始めの挨拶程度の一撃を喰らったそれらの式は陰陽師達の頭上を凄まじい勢いで通過し、 地面に激突した際のダメージが許容量を超えたため煙のように消えた。 「最早言葉は尽くした。 これより先は力を以って語るとしよう!!!!」 爆発的な勢いで加速した司仙子龍は、双肩に2門の砲台を装備した亀のように分厚い外殻を持つ式を更に巨大化させた【武身】の重量に任せて潰し斬る。 そしてその式の傍らにいた術者を撫でるように左拳で空を飛ぶという貴重な体験をさせ、 壁のように押し寄せる重量級の式を苦もなく弾き飛ばす。 司仙子龍の一振りで複数の式が宙を舞い仲間を巻き込み面白いように人垣に穴が空いて行く。 見ていて爽快になる、このまま一人で大和国を滅ぼしてしまいそうな司仙子龍の独壇場。 しかし、それも長くは続かない。 「思い上がるなよ青二才が。」
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