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本気で殴られた痛みもあって何を言われたのか暫く理解できなかった卓馬は、 レオンハルトの言葉を何回も頭の中で反復し最大級の疑問符を浮かべた。 「え、だって僕は──────」 「お前は何一つ間違ってねぇよ。」 「何で、何で!!? だって僕はレオンさんを裏切った上に刺したりもしたんだよ!!!? それが間違った事じゃないだなんて、意味が分からないよ!!!!」 「だったら聞くけどよ卓馬、お前にあれ以外の方法で紗耶香を助ける事はできたか?」 「そ、それは………………………」 「多分…………いや、確実に無理だったろうさ。 ……………もしこれで大切なものを履き違えるか、身の丈を越えた選択をして紗耶香を死なせたりでもしてたら────卓馬、オレはお前を殺してたよ。」 「──────ッ、本当に、これが、正しい選択?」 「ああ、唯一の満点にして及第点だ。 それによ卓馬、常識的に考えてお前がオレにした事って御免とか悪かったとかそんな言葉だけで許されるものだと思うか?」 「…………………………謝罪も許されないのなら、一体僕はどうすれば…………………」 「誇れ。」 上から降って来た力強い言葉に卓馬が俯かせ ていた顔を上げると。 そこには先程までの猟奇的な殺人を躊躇いなく実行した全身の血が凍るような畏怖を抱かせる顔は無く、 代わりに卓馬の憧れた普段の彼の頼りになる兄貴のようなニカッとした笑顔があった。 「どうせ謝られてもよ、あんな事されたんじゃ許す気にもなれねぇし気分悪いだけだし。 だったら、自分は大切なものを守りきったんだって誇れ。 図々しいくらいに、オレが呆れ果ててどうでも良くなっちまうくらいに自分がした事は正しいんだ、って。 それがオレを裏切ったお前のやるべき事だよ。」 「レオンさん……………僕は……………………」 「ただ、いくら正しい選択とは言えオレも人間だからな、裏切られて刺された事に対しての怒りはある。 それはさっきの一発で後腐れ無しに全部チャラな。 あの程度の事を根に持つのは馬鹿らしいし。」 「……………ハハッ、あれがあの程度の事だなんて……………本当にレオンさんは………」 「オレからしてみればお前のした事なんて可愛いくらいだ。 つーか、もう嫌だ。 これ以上はもう意地でも動かねー。」
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