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漸く一段落着いた事で何やら熱いものが自分の中でざわつき始めたのを感じ取ったレオンハルトは、 汚れるのも構わず地面に大の字になって寝転んだ。 "金棒を持った鬼"の出現から玉司雪との決着まで約2時間と時間にしてみれば短く感じられるものではあるが、 それは今日は優雅に紅茶でも啜って終わる予定であったレオンハルトを全力で裏切るような濃密な内容。 肉体的・精神的な疲労で最早何をする気にもなれず瞼が非常に重くなり、 心地好い睡魔に身を委ねこのまま眠ってしまいたいという欲求が頭を支配する。 「ちょっ、ちょっと待ってよレオンさん!!! 愛ちゃんは、まだ愛ちゃんが!!!」 寝かせまいと激しく体を揺さ振る卓馬を鬱陶しそうに薄目で睨み、レオンハルトは喋るのも億劫だと言う声で聞き返す。 「…………………愛がどうしたよ? 旧成宮家の残党が全員捕まったんならもう何も─────」 「違う、違うんだ!!! 僕がレオンさんをここへ連れて来るために言った、愛ちゃんが危ないって言うのは全くの嘘じゃないんだ!!! 僕も何が起きてるのか…………それを知る前にあの人達に捕まっちゃったんだけど、でも話してるのを聞いたんだ。 実は愛ちゃんは────────」 次の瞬間卓馬の口から飛び出た衝撃の事実に驚愕しながらも、 どこか予想していたという顔でレオンハルトは立ち上がり言った。 「卓馬、さっきオレがいた場所で今も多分休んでる怠け者共にもその事を伝えて来い。」 「えっと、さっきの場所で怠け者…………ああ、あの変な格好をした2人の事? でもレオンさんは? レオンさんはどうするの?」 高カロリーの携帯食糧を体力回復の霊薬で流し込んだレオンハルトは、一呼吸置いてからこう告げた。 「優秀で可愛い教え子を迎えに、ちょっと一足先に国に喧嘩売ってくる。」 顔を怒りに染め上げ暴言や恨みの言葉を吐き続ける者や、突然の事に戸惑いの声を上げる者に哀れみの視線を投げる者等々。 大和国の首都周辺に住まうほぼ全ての人間を一望できる高台に設置された処刑台の上に、 鈴野愛───真の名は成宮愛が後ろで手を縛られ両膝を着かされていた。
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