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立て続けに3人も天地反転で処刑台から転落し温かい肉の塊となったのを見た陰陽師達は、 それを敵の襲撃と見て直ちに戦闘態勢に入る。 大小姿形様々な式が主に処刑台近くにいる公家を守るため布陣を築くも敵の姿が見えないためできるのはそこまでで、 それは徒に状況が分かっていない民衆達の混乱を招くばかり。 敵は多勢か少数か。 携えた武器は何か。 陰陽師であるか否か。 分かっているのは恐ろしく腕の立つ弓の使い手がいるという事だけで、 敵の居場所を掴んでいない陰陽師達は下手に動く事ができず沈黙のまま緊張を張り巡らせ続ける。 「上だ!!!!」 ふと上を見上げた陰陽師の1人が、大きく弧を描きほぼ垂直に落ちるようにして迫る矢に気付き叫ぶ。 その数凡そ数十。 それは布陣を築いた式の数と能力からすれば別段大した脅威とはならない。 真上へ放たれた式の遠距離攻撃がそれらを迎え撃ち呆気なく一掃される。 だが。 「あれは………………紙?」 恐らくは軽く矢に貼り付けられていたのが迎撃された衝撃で剥がれたのだろう。 大量の長方形の紙が空気抵抗を受けてヒラヒラと舞い落ちる。 細かい破片となって降り注いだ矢の残骸こそそれなりに危なくウザったいものであったが、 貼り付けた意図は分からなくても紙がどうこうできるとは思えない。 それ故不思議そうに眺める者はいても警戒する者はおらず、ついに長方形の紙は陰陽師達の頭上近くまで到達する。 爆発。 長方形の紙が一斉に起爆し衝撃波を撒き散らした。 まだ少し離れていただけあってそれは上から拳骨で殴られる程度の衝撃ではあったが、虚を突いた全くの予想外の攻撃。 加えて頭の芯まで響き一時聴覚を狂わせるような爆音であったため、 陰陽師達は滑稽な程に狼狽え民衆共々大混乱に陥る。 そしてその大混乱の中、人と人の隙間を潜り抜け頭上を飛び越え一直線に処刑台へと向かう黒い影が一つ。
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