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プロローグ
魔王の城。
二人の男が互いを殺す為に闘っている。
そして今、長い長い闘いに決着が付こうとしていた。
「ハァッハァッ…ッ! 何故…何故こんなッ!」
全身から青い血を噴き出した巨漢が一言漏らす。
この男は魔王。
「フーッ…追い詰めたぞ」
全身から赤い血を流しながら金色の髪を青い返り血と、赤い自らの血で濡らした青年が言う。
この男は勇者。
「巫山戯(ふざけ)た事を抜かすな。俺はこんな所で終わる男ではない…」
「へっ!そんな状態で何を」
魔王が嗤(わら)った。
その声は2人が闘う建物全体を揺らす。
「だっはははーッ!!そうだ!俺は終わる!死ぬ!確かにな!それは覆せないだろう!今、俺に残された僅かな魔力を振り絞った所でこの状況は覆せん!!」
それは自らの敗北を認める言葉だった。
しかし、敗けを認めても尚、その言葉には圧力があった。
勇者はまるで魔王がこれから勝利する。その様な感覚すら覚えた。
「貴様は…確か父も母も兄弟も居らぬ天涯孤独…そうだったな?」
言葉では言い表せない嫌な感覚がした。
勇者はその感覚のせいで言葉に詰まった。
魔王はその間を肯定の意として捉え、再び口を開いた。
「くくく…ならば安心した。ここで貴様さえどうにかすれば俺を邪魔する者はこの世界には居なくなる…〝勇者″は現れなくなる!」
「ッ? まさかっ!」
「もう遅いわっ!」
勇者の真下に眩い光の魔方陣が浮かび上がる。
「くっ! サタンンンン!!!」
魔王の名を叫び、勇者は消えた。
それと同時に魔王も最後の力を使い果たし、膝から崩れ落ちた。
「くくく……これで…憎きカムロックの血は………………………」
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