1章 ー無くなる平穏ー

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帰りのホームルームが終わる。 残れと言われたが、何か良くない予感がする。 冗談抜きにヤバイ。そんな気がしてならない。 今ここで帰っても問題を先送りにするだけで、何も解決しないだろう。 それでも俺は明日の不安より、目先の安心を選んでしまったのだ。 今、俺は下駄箱に居る。 ホームルームが終わり、下校する生徒に紛れてここに来た。 普段から存在感は薄い方だ。 誰かに記憶されずにここまで来れたと思う。 だけど、ここまで来て急に鳥肌が立った。 気配を消すトレーニングなどした事は無い。 ただ俺は〝その他大勢″に…〝生徒A″になっているだけだ。 それは認識されても、記憶に残らない。そうしてるだけ。 だから気配を消すなんて出来ないし、気配を察知する事も人並みにしか出来ないのだ。 でも、俺は今ハッキリと感じた。 すぐ近くに。 真後ろに。 もう一度言おう。 俺は気配を察知する事は人並みにしか出来ない。 なのに何故こうもハッキリと分かるのだろうか。 人が 俺に向ける 〝殺気″というものを。
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