序章

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7月7日。 まだ夜の余韻をのこす空気に、水音が広がる。 夏の日差しに森の緑が光合成をしている様が見えるようだ。 水は森の緑を育むように、湖から湧き出でて、小さなせせらぎとなって麓へ下っている。 パシャ、と水をはねあげ、翠は湖から頭を出した。 弛く波打つ髪は肩を伝い、ほそやかな肩甲骨を僅かに隠す。 水は清らかで光をキラキラと反射して、翠を精霊のように幻想的に装飾する。 「スイ?」 呼び声に振り向き、湖の畔にある小さな建物へ泳いでいく。
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