恋に落ちた瞬間。

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名前は分からないけれど。 あの満員電車の中で、あの人だけが気付いて助けてくれた。 お礼を言わなきゃいけない。 「この人が私の身体を触ったんですっ」 私以外に名乗りをあげた被害者の女の子は、私よりも年上っぽい。 その彼女と、最後まで暴れる犯人を、駅員が連れて行くのを見送っている、その人。 渦中の人たちの姿が構内へ消えたのを見届けたあと。 私はいそいそと彼へ歩み寄った。 「あのっ」 声をかけた瞬間、彼が振り返った。 と同時。 私の意識は、瞬く間に別世界へ飛ばされた。
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