恋に落ちた瞬間。

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生まれて初めて経験した、卑劣な行為。 「はっ……」 電車を降りたあとも。変なクスリでも飲んだんじゃないかっていうくらい、激しい動悸がしてくる。 ホントにヤバい……。 右手で胸を押さえながら、呼吸を整えていると 「離せ、こらっ」 悪あがきをしているらしい、さっきの痴漢の声が聞こえてきた。 やだ、あの痴漢だ……。 恐々として振り返れば 「あ……」 あの人だ。 さっきホームで見た、周りの人たちが“カッコイイ”って、噂をしていた人。 薄手の黒いジャンパーが映える、高い身長。 それから、スタイルが良さそうな、キレイなラインのシルエット。 きっと間違いない。 ホームで見たあの人が、痴漢の両腕を後ろから掴んで捕らえていた。
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