終焔~しゅうえん~

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僕もいっそのこと、彼女の事を忘れてしまえたら。 そうしたら、どれほど楽になれるだろう。 しかし。 忘れてしまうには、彼女は美しすぎる。 忘れられるはずなど、ない。 素足が湿った土を踏む。 目の前には、油のようにとろりと、波のない湖。 僕は後ろから彼女を抱きしめ、静かに湖面を覗き込んでみた。 水面に反射する、歪んだ僕ら。 彼女が水鏡越しに僕に微笑む。 僕も水鏡の彼女に微笑み返す。
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