麗しの瞳

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数日前に九条が捨て猫を拾ってきたかのようにひょっこり連れてきた。この子も一緒にご飯食べるぞ、と。すると捨て猫は一言だけそっと呟いたのだ。「澤田理々、……よろしく」 九条と違って澤田のことは分からないことだらけだが、隣でクスクスと笑ったりしているのを見ると、奏介たちと一緒にいるのがイヤというわけではなさそうだ。 そんなわけで今日もヘンテコないつものメンツで昼休みを過ごしている。 「あっ、そうそう!ちょっとちょっと、これすごくない!? エジソンの蒸気機関なんかよりよくできてると思わない!?」  九条は正面に座った奏介に自分の弁当を開けて、手にのせてぐいっと突き出す。 あまりの勢いにわずかにのけぞりながらもその弁当箱を見ると、 「……これって、アレか……? この黒ゴマとか、アレなのか?」  そうよ、と自信に満ちたまなざし。  唐揚げ一つ分スペースのできた弁当の中心には半分に切られたゆで卵が二つ肩を寄せるようにくっついている。そしてその頂上にはプスリと刺さった黒ごまが一つずつ。それを中心に円を描く茶色いシロップらしきもの。 これはまさしく、アレだ。 Fくらいはありそうだ。  でもちょっと……いやかなり安っぽさも否めないが。 「なになに?あたしにも見せてよ瑠衣」
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