麗しの瞳

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「……も、もしかして……木坂……か?」  はぁ、と疲れ切った表情を作ってため息をして見せる少女。 「やあっと、気づいたの?あいっかわらず鈍いのね」  ああ、神様。なんということでしょう。わたくしにもまだ希望はあったのですね。 明るい春の日と軽い罵声を浴びて心にぽっとタンポポが咲く。あれ?タンポポって夏だっけ?まあそんなことはどうでもいい。 「木坂か、そうか……うぐっ……よかっだ、ほんどうによがっだぁ」 「ちょ、ちょっと、なに泣いてんのよ」  安堵からかうれしさからか、情けなくも突然あふれ出した涙が視界をぼやけさせる。 ああ、自分はぼっちじゃないんだ。知り合いがここにいるんだ。と感傷に浸っていた。 が、……ん?なんだろう、この違和感……。幼馴染なんだ、木坂絢羽は。小さいときからずっと一緒で、あろう事か家と家は背中合わせ、そして小学校の卒業と同時にどこかへ引っ越してしまった。当時の奏介は新しい連絡先を聞くこともなかったためにそれからはすっかり音信不通。それでも確かにいた、木坂絢羽という幼馴染は。 でも、おかしい。何かが引っかかる。 しかし、違和感をとらえた目は涙でまともに働きやしない。
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