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「うっわ…なんだこれ…」
エルムは大きくそびえ立つ外壁を見て大袈裟に驚いた。
食料もないわ休みもろくにとってないわの最悪な旅状態から脱出すべく、繁栄してそうな国を目指して歩いてきたが…
「これは…無理だな…」
あらためて自分の格好を見てみる。
どろどろに汚れたコート、靴は擦りきれて所々足が出てしまっているし、髪はボサボサのがびがび、全体的に汚い。
普通の国ならもちろん、多少の嫌な目を覚悟して入ったのだが…
「ぴかぴかな金の門に、ばかでかい宝石が嵌まった国旗、門番があんなにズラリと……はぁ…金持ちの国かなこりゃ…」
暖かいご飯が…気持ちいいお風呂が…と呟きながら名残惜しそうにその場を後にしようとしたその時、門番の一人が近寄り、エルムのコートを鷲掴みにした。
「こらっ!入るなら早くはいれ!そんな汚い格好で彷徨かれると困るんだよ!」
門番はエルムの耳元でそう叫ぶと、コートを掴んだ手を見て眉を潜めた。
手にはもちろんしこたま泥が付着した。
「さあ、はやくしたまえ!」
なんだか嬉しいような悲しいような複雑な気持ちでエルムはあとに続く。
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