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……
「ううっ…う…」
「ええい泣くな泣くな!ほれ、お主の服も綺麗に見繕ってやったのじゃぞ!」
「だって…いきなり裸に剥かれるなんて…」
「な…なんか女々しいやつじゃのう…」
うううううっと犬のように唸っていると、小さな王はこう切り出した。
「この国はの、みんな孤独なんじゃ。金で買える真のものとは程遠い縁。真のものでないと分かっていながらも求めてしまう自分の感情に苛つき、それを埋めるためにまた偽りと呼べる縁を買う。それの繰り返しなんじゃ。」
小さい王はマントと同じ赤い紅い目を伏せ、寂しそうにこう付け加えた。
「かくいうわしも、同じく孤独の身。親は二人とも早くに亡くなった。そのせいで遺産やら仕事やらは全部わしに押し付けられた。人とのかかわり合い方を知らぬわしは主をこうして無理矢理連れてくることしかできなかったのじゃ。」
エルムは小さな王と同じように目を伏せる。
いつの間にか目の前のテーブルにたくさんのご飯が用意されていた。
「早く食べぬか」
まるでこちらの心を読んだかのようにそう言われたので、有り難く頂くことにする。
うん、美味しい、なんの味か解らないけど美味しい。
「食べたか?食べたな?」
子供独特のすんだ瞳が私の顔を見上げ、しつこい位に問いかけた。
「うん食べた。美味しいね、これ」
「食べたか!食べたのだな?よし、お主は今日からわしの手下よ!旅の者であろう?わしを連れていけ!拒否は認めんぞ!」
…ん?
「さあ、早く食べろ!旅じゃ!旅に出るぞ!」
…………はめられた!
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