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夜、王の集う国を出てずーっと道なりに歩いたところにあるこの星のふる川の道で一休みすることになった。
「もう歩けんー…。」
大きな石の上に座って足をパタパタさせている小さい王にコップを渡す。
「これは……?」
「スープ。暖かくなるぞ。」
ほお…と不思議そうな顔をした王を横目で見つつ、自分のコップの中のスープを啜る。
「……わしが着いてきたこと、怒っとるか?」
王は横目でこちらを伺いながら恐る恐る聞いた。
「全然怒ってない。一人で旅するよりは良いからね。孤独の身どうし、仲良くやっていこうよ。それに私誰かとしゃべってないと寂しくて死んでしまうからさ。」
自嘲気味に笑えば、王も眉を潜めて困ったように笑ってくれて…
そういえば重要なことを聞いていないのを思い出す。
「ところで、名前は?」
スープを啜っていた王は名前を聞かれた瞬間にぴしりと固まり、間を空けてボソリと小さく呟いた。
「……………ちびた」
「………」
「………」
「………ふ」
「あー!笑いおったな!ばかばか!わしだってこんな名前いやじゃ!」
ぷくうっと頬を膨らませた小さな王はエルムの腰を叩く叩く。
「いてっいてて!笑ってないって!可愛いじゃん!」
「可愛いは誉め言葉じゃないっ!このおバカ!人の名前を笑っちゃいけないと教わらなかったのか!」
スープをやけくそ気味に飲み干し、川の水をコップで掬う。
コップの中に小さな夜空ができ、それをまた不思議そうに見つめた。
「まあ…知ってると思うけど私はエルム。よろしくね、男だよ。」
「うむ!これからよろしく頼むぞ、エルム!」
元気いっぱいそう言うと、ん、とカップを差し出した。
「川でお星さま捕れたからエルムにやる!」
微笑んで受け取ると、ちびたは満足げに目を細めた。
彼には教えてあげることがたくさんある、
でもそれは、今日やらなきゃいけないことじゃない。
明日からゆっくりゆっくり、教えていってあげよう。
「さあちびた、そろそろテント張って寝よう。明日早いぞー」
「てんと?なんじゃそれは。って、ちびたって呼ぶでない!」
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