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「だから、俺は後ろ向いてることにする」
そう言うなり、智ちゃんは私から背を向けた。
それだと、私は智ちゃんの背中にインタビューすることになる。
なんだか…いくらなんでも寂しくない?
「じゃあ、私も後ろ向く!背中合わせ。ね?」
「ガキか」
そう、小さい頃、よくこうして背中合わせで話をしていた。
特にお母さんに怒られたり、大事なものをなくして悲しかったとき、悲しんでいる顔を見せたくなくて、智ちゃんはよく私から背を向けた。
私も私で、無理に顔を向けさせたくなくて、同じ様に背を向けていた。
合わせた背中から伝わる確かな暖かさで、私たちは安心していたのだと思う。
覚えていたのが私だけではないのが嬉しくて、私は背を向けた。
運動したての、もんわりと湯気が出ていそうな熱い智ちゃんの頭が、私の頭にそっと触れた。
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