1 背中合わせのインタビュー

10/24
前へ
/68ページ
次へ
「だから、俺は後ろ向いてることにする」 そう言うなり、智ちゃんは私から背を向けた。 それだと、私は智ちゃんの背中にインタビューすることになる。 なんだか…いくらなんでも寂しくない? 「じゃあ、私も後ろ向く!背中合わせ。ね?」 「ガキか」 そう、小さい頃、よくこうして背中合わせで話をしていた。 特にお母さんに怒られたり、大事なものをなくして悲しかったとき、悲しんでいる顔を見せたくなくて、智ちゃんはよく私から背を向けた。 私も私で、無理に顔を向けさせたくなくて、同じ様に背を向けていた。 合わせた背中から伝わる確かな暖かさで、私たちは安心していたのだと思う。 覚えていたのが私だけではないのが嬉しくて、私は背を向けた。 運動したての、もんわりと湯気が出ていそうな熱い智ちゃんの頭が、私の頭にそっと触れた。
/68ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加