プロローグ

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9月を一週間前に控えたある夏晴れの暑い日、私は額にうっすらにじんだ汗を拭ってデジタル一眼レフのカメラを構えた。 私の手元にやってきて8年経つ私の相棒は、今ではすっかり私の手に馴染んでいた。 昔は私の手が小さくて、長い間カメラを構えていると腕や手が疲れてくるほどだったのに。 蒸し暑い体育館の壁際、もはや特等席となったパイプ椅子に座って、すばしっこく動き回る被写体にビントを合わせた。 私にレンズを向けられている彼も、落ち着かなさそうにきょろきょろしたり、露骨に嫌な顔をしてみせたり、時には普段では考えられないような凡ミスをしたりしていた8年前とは違い、慣れた様子で堂々と3オン3のミニゲームを楽しんでいる。 一瞬、レンズの奥で彼と目が合う。こうやって、バスケしている彼と目が合うのは何度目だろう。 1年の夏目くんが外したシュートのリバウンドを取って、シュート。 味方のミスをチャンスに変えてしまう彼のプレーは、いつ見ても清々しい。 今回も、ボールはリングをくぐってボスンと音をたてた。
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