プロローグ

3/3
前へ
/68ページ
次へ
ハイタッチをかわす腕に程よくついた筋肉が、オトコノコだなあと改めて思ってしまう。 なるほど、女の子の「抱きしめてほしい」腕って、こういう腕かな、と一人納得した。 さすがは2年エース。 マークをつけられたときの切り替えしも、パスをまわす腕の使い方も、軽やかに地面を蹴るバッシュの音も、よく知っているはずなのに、そこには幼なじみの彼ではなく、「バスケ部エース」の顔をした彼がいた。 彼は私がずっとカメラで追いかけているのをわかっているようで、「他のメンバーも写してやれよ」と言いたげな目を向けた。 幼なじみだからか、なんとなく言いたいことはわかる。 はいはい、わかってますよ。 でも、今回のメインはあなた。もう何枚かはいい写真を撮るまでは、レンズを背けられない。 それが私、吉野実(よしの みのる)の小さなプライドだ。
/68ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加