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「…本当に、忘れない?」
「あたりまえやろ。何で忘れんねん」
疑うように俺を伺っていたあいつは、しばらくじっと見つめてから、ふうっと息をついた。
「……なら、いいんだ」
素っ気なく響いた声とは反対に、あいつはなんだか嬉しそうな顔をしていた。
珍しいそんな表情に、俺まで嬉しくなって明るく声をかけた。
「ほら…はよ行くで。腹が減ったらなんちゃらや」
「…バカじゃないの。戦はできない、だろ」
「あーハイハイ。もうええやん、はよ行こうや」
「あっ。バカ…引っ張るなって!」
ぐいっとあいつの手を取って歩きだす。
細っこい手は冷たくて、消えてしまいそうで……なんだか不安になった俺は、ぎゅっと握った。
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