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「…なぁ」
「なんだよバカ」
「…前々から言いたかってんけどさぁ、バカ言うんやめてや」
三度目のバカ呼ばわりに文句を言うと、あいつはしれっと言ってのけた。
「バカにバカと言って何が悪いんだ」
「おま…っ!またバカ言うたな!言うならせめてアホにしてや!」
「どっちでも変わんないだろ」
あいつはめんどくさそうにしっしと手を振る。
…くそう、俺は犬じゃないんだ。
「アホとバカは天と地ほどにちゃうわ!ええか、そもそも大阪人はな…」
「腹減ってんだろ、行くぞ」
「あ、ちょ、おい!」
右手を強く握り返されてどきっとした。
あたりを優しく染める夕焼けに、あいつの整った横顔が映える。
ふと赤い空を見上げると、番いの鳥が寄り添いながら小さく飛ぶのが見えた。
…忘れたりなんか、しないよ。
俺がそっとつぶやいた言葉を、少し冷たい風がふわりとさらっていった。
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