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プロローグ
―…これは14年前のとある夫婦の会話。
日が当たる、窓際の椅子に茶色い髪色の女性が一人。
その横には金髪の男が女性の腕の中で眠る赤子を見下ろしていた。
窓から青空を一度眺め日の眩しさに目を細めると、女性は自分の腕の中に眠る子供に視線を移した。
腕のなかでスヤスヤと眠る可愛い我が子。
「フフ…本当に可愛いわ。」
はしゃぐ妻の言葉に、横にたつ男は軽く笑う
「…そろそろ揺りかごの中に寝かしてやれ。可愛いのは分かるがナギラ、余りはしゃぐと体に触る。少し寝なさい」
ナギラ。それは大切な妻の名。
男はナギラから赤子を受けとると揺りかごの中に寝かした。
「ふふ。私は大丈夫。リロイ?貴方との子供を少しでも長く見ていたいわ。」
リロイ。大切な夫の名。
「…この時代貴方と私の命は何時だって危ない。明日も知れない毎日。一秒だって子供と貴方といたい…」
「…心配のしすぎだ。子供もお前も俺が守ると言っただろう…」
リロイの台詞に頷きながら、ナギラは椅子から体を起こす。
「そうね。この子が大きくなる前に…早くこの世界を…」
揺りかごの中で眠る愛する我が子。
そんな我が子の頬にナギラは撫でる様に手を置いた。
「―…どうか貴方が、普通の人生を歩めますように。―……リロク」
―…リロク。
それは愛する我が子の名。
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