プロローグ

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「久しぶりだな」 「出来れば、二度と会いたくなかったけど」 暗い空間で、男と女が睨み合うように立っていた。 その空間で相手を認識出来るのは、周囲に蝋燭が所々で灯っているからである。 「相変わらず、薄気味悪い空間ね」 女性は吐き捨てるように、そう言った。 暗い空間に暖色の光があれば、心も落ち着きそうであるが、彼女が感じているのは寧ろ逆だった。 蝋燭の光は鈍く怪しく光り、寒気すら感じる。 そして、姿形も無く漂う香の匂いは、自然と呼吸の回数を正常よりも少なくさせた。 「そう言うな。それでも此処に君が来たのは、希望を持ってだろう?」 「無駄話は結構。さっさと用件を済ましな」 「全く、相変わらず気丈な性格だ」 そう言って、男は数枚の紙を彼女に差し出した。 そして、男は話を続ける。 「そこに現在の研究の経過と方針が書いてある。読めば解るが、終わりは近づいている」 「……そう」 彼女は紙を受け取り、一瞥すると男に背を向ける。 暗い空間で文字を読む気にならなければ、一刻も早く帰りたいという感情が彼女の中にあった。 「では、妹さんにも宜しく伝えといてくれ」 「…………」 彼女は何も答えずに、男を一度だけ睨んだ。 それに対して男は口元を歪めて笑う。 その表情に、彼女は舌打ちを一度すると足早に去って行った。 その彼女が空間から出て行く瞬間、男は消え行く背中に小さく呟いた。 「君の進むべく道に幸運を……ロベリア」
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