蜃気楼 -1-

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「俺も久しぶりに早く帰りたいものだ」 「私が全然残業していないように言わないでくれる? 今日は用事があって早く帰るだけ」 「用事? あぁ、別に深くは聞かないけど……」 「別に構わないわよ。妹が家に来るの」 「妹……確か、学園の生徒だったな?」 アルフレッドの言葉に、彼女は静かに頷いた。 そして、 「夜に来る予定だから、それまでに部屋を片付けないと小言が面倒なのよ」 「お前も妹には弱いんだな」 「……五月蝿い」 「まぁ、姉とはいえ教員が一緒だから俺も小言は控えるが、遅くまで生徒を拘束するなよ」 「解ってる。こっちの用件は、すぐに終わる。それに……」 「それに?」 「妹の方が早く寮に帰りたがるかもね。今、友達が出来て楽しそうだし……今日も、友達と遊んでから来るって言っていたし」 そんな会話を交わしながら歩いていると、二人は職員室へと着いた。 室内での二人の席は遠く離れていることから、中に入れば自然と分かれることになる。 「じゃあね」 「あっ、ロベリア」 中に入り、席に戻ろうとしたロベリアにアルフレッドが話し掛けた。 「何?」 「何か困ったことがあれば言えよ?」 「……何それ? お節介も程々にしておかないと、過労死するわよ」 ロベリアは一つ皮肉を言って、彼に背を向けて自席へと戻って行った。
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