蜃気楼 -1-

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学園を出てから一時間後、ロベリアは自室の部屋の掃除を終えて、一息をついた。 普段から汚れているわけでは無いが、掃除を始めたら細かい部分まで気になり時間が掛かってしまった。 「こんなものだな。後は買っておくものは……と」 彼女は、そう言って部屋の冷蔵庫を覗いた。 昨日買い物を済ましていたので、大体のものが揃っている。 飲み物もあれば、食材もあった。 凝ったものは作れないが、二人で夕食を作る分には問題は無いだろう。 「あとは待つだけ……か」 部屋は少し大きめのワンルームに、キッチンや浴室などは別についている。 女性の一人暮らしとしては豪華な部屋だが、これはLCアカデミーの教員に与えられる独身寮であった。 独り言を呟いたロベリアは、天井を見上げる。 妹を待つ彼女の気持ちは少しだけ高揚していた。 それだけ、楽しみなのだろう。 「……あっ」 そこで彼女は、とあることを思い出し、ベッドの枕元にあった資料を手に取った。 これは先日、『ある団体』から受け取った資料である。 「これは隠しておかないと……」 そう言って、彼女は資料の表紙に視線を落とす。 修道院イルシオン=モルス報告書 研究テーマ:魔力欠乏症患者への、魔力付加及び強制生成方法 ロベリアは、その資料を妹が決して触らない自分の仕事で使っている鞄へと入れた。
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