119人が本棚に入れています
本棚に追加
月明かりに照らされて並んだ影を眺めながら、時折顔を見合わせて笑った。
幾度か角を曲がって長い坂を下った住宅街の中。
街灯の少なさと、考えられないくらいの静けさに「不用心じゃないの?」と何度も尋ねた。
見上げる空に、沢山の星が瞬く。
仕事に追われて空を見上げる余裕も無かった。
「夏の大三角だよ…」
「どこ…?」
「ほら、アレがベガでしょ…で、アレが~」
空を指差すヒカリの真後ろに立って、ヒカリの視線の高さまで腰を屈めた。
二人で星座を探したり月を見るのが好きだった。
声を潜めて…
西の空にはベガとアルタイル…
月は沈みかけていた。
「織姫と彦星って、会えたの?会えなかったの?」
「え…」
顔を向けたヒカリの唇に軽くキスをした。
最初のコメントを投稿しよう!