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店の外で、ミカコや大学時代の友達が待っていた。
「あ、来た、来た。
……あら、気をつけて……」
ミカコの一言に
「おぅ…」
と返事をして集団に背を向けて歩き始めた。
そういえば、みんなで飲んだ帰りはいつもヒカリの手を繋いで歩いていた。
少しずつ、あの頃を思い出す。
今なら…今日なら、言えなかった言葉も素直に言えるかも知れない。
「ユウ…速い」
繋ぐ手に力が込められる。
「そんな高いの履くから…ヒラヒラさせて…」
立ち止まってヒカリを振り返った。
「あ、見て…」
ヒカリは空を指差した。
「上弦の月……でしょ?」
「うん…週末は満月だな」
二人で見つめた先には、右半分だけの月が出ていた。
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