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途中、風雅の部屋の正面に続く階段を右手側に歩いたとき、ひめりに会った。
豊を見るなり、不思議そうに首を傾げた。
そういえば、いつの間に帰っていた。昨日の作戦は上手くいったのだろうか。
「豊?誰と話してるの?」
「え?」
言ってる意味を理解できないまま、ふと隣を確認する。
桃の子は眠たそうに目尻を指で拭っていて、しっかりそこにいる。
「一人でおしゃべりなんて、豊、友達いないみたいなのー!」
と、バカにしているのかびっくりしているのか、ひめりはドタバタ走って横を通り抜けていった。
「……あいつ、何言ってんだ?」
「そうじゃよ、豊」
怪訝そうにひめりの背中を見つめていると、桃の子が突然、重々しい声色で言った。
「……何がそうなんだ?」
「我は、豊の前にしか姿を見せていない」
髪に、左右対称につけられた桃の髪飾りを弄りながら、目をこちらに向けることなく、つぶやくように言った。
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