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倒れた身体を起こすと、まるでお伽話の中に迷い込んだような錯覚が起きた。
照明器具は、何の情緒も感じられない蛍光灯ではなく、遥か遠くにある天井には豪奢なシャンデリアが吊るされている。
左右のコンクリート製の壁に洋燈が並び、さらに、絨毯の外側の床は一面大理石。
眩しいくらいに明るかった。
まして豊は田舎出身だから鉄筋コンクリートにも少し驚くほどなのに、衝撃はかなり大きかったらしくてしばらく口が開きっぱなしだった。
真紅の絨毯の上を進んだ突き当たりには階段。
天井が遠いのは、二階は吹き抜けになっているからだった。
真紅の絨毯は階段にまで敷かれており、その柔らかな、まるで春の陽気に包まれた草原を歩いているような感覚で踏みしめながら足を進めた。
緊張が少し解けた気がした。
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