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ーーしかし、それは束の間だった。
階段を上がって2階に到達して、つきあたりに入り口と同じような、重々しい雰囲気を醸し出す扉があるではないか。
真紅の絨毯はその扉まで続いている。
しばらく拳を握りしめて固唾を呑んで突き当たりを凝視していたが、さらに強く拳を握りしめ、深く息を吐いて豊は足を進めた。
ここまで来て、なぜ立ち止まる必要があるのか。
本当に嫌で仕方がなかった人間界からせっかく抜け出す事ができたのに。
例え何が待ち受けていようが、もう人間界には戻るという選択は絶対にしない。
絨毯の柔らかい感触など忘れ、目は一心に先方の光り輝く扉を見つめる。
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