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一方、部屋に残ったさくらと風雅。
さくらは風雅に軽くお辞儀して踵を返し、部屋を去ろうとする。
しかし
「……これは、お前の贖罪か?」
と、風雅はさくらの背中に問う。
「……」
刹那、部屋の中には何の物音もしなくなる。
「……そう…見えますか?」
「ああ。むしろそうにしか見えんな」
さくらは足を止めて、物憂げに白く塗られた天井を見上げた。
「そんなつもりはなくても、そうなのかも知れません。
あの子の代わりに、不幸な人間を幸せにする。
いつのまにか、私なりの答えが出ていたようです」
さくらの言葉を聞いた風雅は呆れてため息をついた。
「……その幸せは、誰にとっての幸せなのだろうな。
お前の勝手な想像の幸せを、他人に無理に押し付けて本当に当人は幸せなのだろうか」
「……」
「お前は生真面目すぎるのだ。すぎた事を気にしていても、きりがないだろう。
いい加減、前を見つめたらどうだ?」
「……そう…ですね……」
さくらは振り返る事なく風雅の部屋を出ていった。
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