120人が本棚に入れています
本棚に追加
「どう?白櫻館は。私がいつも掃除してるから綺麗でしょ?」
「うん、綺麗だよ」
「たまにはお兄ちゃんも手伝って欲しいんだけどねぇ」
……と、会話しているさなか、浮かない顔をしたさくらが階段から降りてきた。
気づいてすかさず声を掛ける。
しかし、さくらはまるで気づかないように通り過ぎようとした。
二度目はさくらの肩に触れて呼んだ。そうしたら流石に気づいて、驚いたように目を丸くしてこちらを向いた。
「あっ、豊さん」
「どうしたの?何かボケッとしてたよね?」
「あー、うん。なんでもないよ。
ところで、林檎に案内してもらってたんじゃないの?」
「いや……それがね」
豊はさくらに林檎が勝手に怒ってどこかへ行ったことを説明した。
ついでに、あまりに勝手でムチャクチャな誤解をされていることも。
そうしたら、さくらはクスリと笑った。
そして、「豊さんも大変ねぇ」と、まるでおばちゃんのように笑って豊の肩を軽く叩いた。
最初のコメントを投稿しよう!