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そして、さくらはすぐに豊から離れ、軽く息を吐いた。
「豊さん。私はもう帰らないと」
「え?どこに?」
「森だよ。あの森。私の住まいはあそこなの」
言いながら、さくらは踵を返して背中を向けた。
「そっか……。もう少し一緒にいたかったな。
……さくら、ありがとね。さくらのお蔭で俺、すごく幸せになれたような気がする!この世界でなら何とかやっていけそうだよ!」
まるで遊園地に来てはしゃぐ子供のように言葉を放つ。
すると、さくらは振り向いて、何だか……消えてしまいそうな笑みを浮かべて首を軽く傾げた。
「そう言ってもらえると、嬉しいな。
会いたくなったらいつでも呼んでね?じゃ、お幸せにね♪」
さくらは足を進めた。
その姿を、豊は見えなくなるまで見つめていたーーいや、目を離せなかった。
その背中が、何だか妙に悲しそうだったから。
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