1-2 白櫻庭園

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それは、豊の手くらい大きい蝶のシルエット。 その巨大な蝶を見て、豊は硬直した。 無理もない。だって、その蝶は……紫色の不気味な模様をし、瞳そのものが身体でそこから羽が生えた蝶だったのだから。 「ひっ、ひぃぃぃぃ!!」 情けない事に腰が抜けてしまった。 階段に腰を下ろした豊の姿を、一つ目の蝶はさも面白そうに見つめている。 刹那、階段の奥からコツコツと足音が響き渡り、こちらへ近づいてくる。 豊は声にならない声を上げて必死に逃げようとする。 しかし、腰が抜けてしまって動けない。 足音の正体のシルエットが見えた。 どうやら、女の子らしかった。
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