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どうして伊吹が、必死になって夏樹を庇うのか。
どうして伊吹が、夏樹の振る舞いを謝るのか。
みのりはなんだか自分が悪いことをしたような気になって、俯いた。
「……伊吹くんは優しいんだね」
「そんなんじゃないよ。ただ、不快にさせちゃったかもと思って。だってほら、夏樹呼んだの俺だし」
「だったら、勝手に不快になった私も悪いよ。でもごめん、ダメなんだ、ああいうタイプの人。自分に自信がある人は、人が傷つくことを平気で言うから。ようやく立ち直ったばかりなのに、今はちょっと、関わりたくなくて」
「何か、事情があるんだね」
頷いたみのりの頭に、大きな手が触れた。
ドキリとしてパッと顔をあげる。
驚いたのかすぐに手は離れ、見つめた先で動揺した様子の伊吹が目を白黒させているではないか。
女の子に慣れていない、ウブな反応は新鮮で可笑しかった。
思わずフッと笑みをこぼせば、伊吹は顔を真っ赤にして口を一文字に結ぶ。
「ごめん、勝手に触って」
「いいよ、嫌じゃないもん」
「~~っ……。やっぱ魔性だな」
「え?」
「気をつけたほうがいいよ」
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