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突然のみのりの登場に瞠目する周囲の様子など、視界にも入らない状態だった。
一刻も早く携帯を奪取して、夏樹に捕まることなく、この場を去ることが目標だ。
そしてみのりは、絶望した。
「やあ、みのりちゃん、探し物はこれかい?」
声をたどり目線をあげれば、したり顔でみのりの携帯を見せびらかす夏樹がいた。
最悪だ。
「か、返してください」
「いいよ~別に。ここまで取りにきたらね」
「壊れてもいいから投げてくれませんか」
「その労力ぶん、あんたが何かしてくれんの?」
「……」
本当、最悪だ。
苛立ちも頂点まで達する寸前だが、伊吹が待っていることを考えると、うだうだしていられない。
「あの、私もう帰るんで…!」
「みのりちゃん、そう言わずに座らない?」
と、思った矢先の伊吹の登場。
唖然としてしまった。
「あ、い、伊吹くん……えと……」
「ほらほら、いいから座って座って」
まさか、伊吹まで敵にまわるとは。
くっと、苦虫を噛んで、みのりは促されるままに席に着く。
隣が伊吹なのはありがたいが、正面には顔も見たくない夏樹がいた。
思わずため息を漏らしてしまいそうだ。
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