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「携帯はあった?」
「う、うん。あったけど、あの人が返してくれなくて……」
ちらりと様子を伺えば、グラスを片手にじっとこちらを見つめる夏樹と目が合った。
びくりと肩を震わせて慌てて視線をそらすと、向かいではぁと息をつくのが聞こえた。
うんざりなのはこっちの方だ。
内心ムッとして再び目をあげ、夏樹を睨みつける。
「感じ悪~。人のこと顔だけで判断するとか最低~」
「中身だって、いいとは思えていないんですけど」
「あ?」
凄まれて逃げるように伊吹の後ろに隠れると、伊吹が困ったようにはははと笑った。
「ケンカしないの」
「でも伊吹くん、この人怖いんだもん」
「そりゃ初対面でいきなり嫌われたら、こっちだって気分悪いだろ!」
「だったら関わってこなければいいでしょう!」
「そんなかっこ悪いことできるかーっ!!」
夏樹の言い分は全く理解できなかったのでスルーしよう。
「伊吹くん、ごめんね。私ホント今日はもう帰るから」
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