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「ごめん、一人ドタキャンでさ、急遽別のやつ呼んだんだ。もうすぐ来ると思うから」
浜田みのりは合コンの席につき、店員によって運ばれた水を一口含んだ。
男性4人、女性5人が集合した居酒屋の一席で、名前も知らない誰かが、気まずい空気を吹き飛ばすように遅れてくるのだと告げた。
みのりは暇つぶしに自然な素振りで合コン相手の男の顔を、端から順に流し見た。
中の下から中の上だな。
ホッとこぼれた吐息は安堵によるものだ。
弾み切らない会話の理由は、パッとしない男性陣に、女性陣がすっかり白けてしまったからだろう。
しかし、みのりにとっては好都合であった。
男は顔でない。むしろ顔がいい男は、顔だけだ。クズなのだ。
そういう思考の持ち主なのである。
ゆえに、この合コンのメンツは及第点だった。
これから中身をじっくり見て、好きになれる人が居ればいい。
そしてまた、恋が出来たらいい。
みのりは期待を胸に、始まりの時を待った。
「じゃじゃーん。夏樹くんがやって来たよーん!遅くなっちゃったねーごめんねぇ~って、何だこの空気!暗っ!ほらほら楽しい合コンの始まりだよ!さ、席開けて!ね!」
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