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数分前までのワクワクはその瞬間あっけなく消え去った。
ただ一人の登場で、パッと花が咲いたみたいに、俄かに活気を得た空間。
重苦しい空気は嘘のように消えて、明るい声が飛び交う。
「や~ん待ってた!夏樹くんって言うの?座って!こっちこっち!」
「まじ?可愛い女の子の隣、やったー」
「きゃー何言ってんの、お世辞でも嬉しいなぁもう」
「それがなー俺、お世辞は言わないんだなぁ」
「もうやだぁ~」
真っ白な肌に大きな黒目が浮いて見えるくらい鮮やかで、柔らかそうなクセ毛が楽しげに揺れる。
世に言うイケメンである。
それもそんじょそこらのレベルではない。
上の上のなかの上だ。
女性陣の目は言い過ぎではなくハートだった。
ただ一人、みのりだけが、絶望的な気分でその男、夏樹から目を逸らした。
(私は関わらないぞ。絶対に関わらない)
ごくごくと水を飲み下し、平静を装う。
「それじゃあドリンクえらぼっか!乾杯しよう!」
始めにも声をあげたが、短髪で細く優しげな瞳が印象的な男性は、どうやら幹事のようだ。
彼に促されてメニューに目を通す。
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